ある少女の物語

そのうち裏話でー、と思ってたけど、どうにもうまく書けないのでとりあえずまとめておこうかと。

ルクレッツィーア・バルカローレ

ロシレッタのリルドラケン互助組合みたいなところの孵化施設で生まれました。生まれてわりとすぐに家に戻り、両親や他の家族に育てられて成長。
ナイトメアを忌避しない種族とはいえ、多種族混在の街に住んでいる以上、あまり公言するのも、ということで対外的には「人間の養女を取った」ということになっています。
家族は兄二人、後に妹も生まれています。もちろん、いずれもリルドラケンです。
父、母、きょうだい、祖父母、それに時たま顔を出す曾祖父。家族に囲まれて、ルクレッツィーアは幸福な幼年時代を送りました。

曾祖父の話

ルッツィーの母の生家は武人の家系で、多くの戦士を輩出しています。
母の祖父、ルッツィーにとっての曾祖父は、ザルツ地方で活躍する傭兵の戦士で、時にバルカローレ家に立ち寄っては、曾孫たちに武術の稽古をつけたりしていました。
しかし、年齢による力の衰えもあり、ある時大きな怪我を負って、それをきっかけに戦働きを引退します。
その後、曾祖父はバルカローレ家で余生を過ごすことになりますが、戦うことをやめた彼は、みるみるうちに衰弱していきます。
曾祖父を武術の師匠として崇めていたルッツィーにとって、それは辛い思い出です。
やがて曾祖父の命脈は尽き、家族に見守られながら静かに息を引き取ることになります。
それは、決して不幸な死ではないはずなのですが……
尊敬していた曾祖父が、戦場で死にたかったと語りながら弱っていく様は、ルッツィーの心に大きく刻み込まれました。

人間の友人

リルドラケンの子供たちと遊ぶことが多かったルッツィーですが、人間の友人もできました。
イーサという少年と、その兄であるヨナという少年。
イーサはルッツィーより一つ年下、ヨナは一つ年上。歳も近いことから、三人は仲の良い友人でした。
二人の家はバルカローレ商会にとっても友好的な商売相手である商家で、父親同士の間にも交流がありました。
……ですが、ある時悲劇が起こります。イーサが命を落としたのです。急病、あるいは食中毒。死因ははっきりしません。
いずれにせよ、兄であるヨナはそれ以来、人の変わったようになります。
距離の遠くなったルッツィーとヨナですが、それ以降も友達付き合いを続けていました。……少なくともルッツィーは、そう思っていました。

告白

やがてヨナの父が亡くなり、商会の跡はヨナが継ぐことになりました。成人していくらも経たない彼の双肩に、重圧が圧し掛かります。
そんなヨナを心配はするものの、ルッツィーにはどうすることもできず。それでも、折を見ては彼のもとを訪ね、その弱音を聞いたりしていました。
やがて、ルッツィーもまた15の歳を迎えます。リルドラケンとしてはまだ成人に満たない年齢ですが、人間としてはもう大人といっていい歳。
いつものようにヨナの顔を見に行ったルッツィーに、ヨナは思いがけないことを言います。
「結婚してほしい」と。
ヨナのことを友人としか思っていなかったルッツィーは混乱し、会話は言い合いに発展してしまいます。

そして冒険へ

言い合いの末、逃げるように家へ帰ったルッツィー。数日考えた結果、ひとつの結論を出します。
ルッツィーは再びヨナの元を訪れました。
「旅に出ることにした。50年くらいかな」
ヨナは、ただ、「待っている」と答えました。
こうしてルッツィーは、『武者修行』と言いながら、本当の目的は彼女自身にもはっきりしない、冒険の旅を始めたのです。