二者面談

「演出家に呼び出されるってロクなことないよねー」
――いや、ちょっと君がわからなくなってきたもんだから。
「伸びてるって言ってほしいね」
――それはまあ、そうなんだろうなあ。ちょうどいいから、未確定だった部分をインタビューしてみようかと。
「過去の話はだいたい知ってるよね?」
――10代前半まで……普通の子。たまたま街に来た旅劇団の舞台を見て憧れる。
「娯楽少なかったからね。人口自体も少ない、子供も少ない、数少ない子供はインドア派が大勢の街だ」(笑)
――だから君といいあっちといい、きょうだいの仲が濃いんだろうね……えー、10代半ばから……グレる。
「その節は本当にもーね。で、行動力だけはあったもんだから、家出した」
――よく劇団入れたね。
「そこは努力もしたけど、運だったね。いい人たちに会えたし、うまくチャンスも掴めた。今思えば、それも女神のお導きかな」
――ちなみに浮いた話とかは。
「あー、それなりに……。でもねー、ああいうところって劇団の身内でくっついたり別れたり繰り返すものでさ。どちらかと言うと、仲間のそれをネタにして盛り上がる側だったよ」
――好きなタイプとかは?
「その時々だったなあ。恋なんて役に引っ張られちゃうんだよ、若いから」(笑)
――そういえば当時の二つ名って?
「"二枚目半"」(笑)
――そうですか(笑)まあ、充実した青春だったと。ところが、数年してあんなことに。
「参ったねー……。ちょっとあの頃のことについては、俺もうまく言えない」
――罪悪感があるみたいだけど。
「兄貴と仲直りできなかったことと、あんな時期の両親に余計な心労かけたことと、他にも劇団長とか色々な人に迷惑かけちゃったこととかね。もうね」
――やるべき事をちゃんとやれなくて、引きずってると。
「まあ、俺、普通の人間だからね。嫌なことからは逃げるし、それで後悔もする」
――でも、女神に救われた。
「俺はそう思った。そう思えば充分」
――で、ここで一つ未確定だった部分があるんだけど。経歴の『何らかの誓いを立てている』
「んー、それ言葉にしにくいんだけど……『自分のためだけに生きない』ってことかな」
――なるほど……やっぱ君あっちの裏面だなあ。ところで最近の悩みとかは?
「悩み……うーん。俺にとってね、女神は救いであって、愛そのものだ。でも、だからって俺には、女神と同じように全てを愛して全てを赦すことはできない。俺は女神じゃないんだから」
――そりゃそうだ。
「俺は女神に救われた。でも、他の人を救うにはどうしたらいいのかって……うん、それかな。俺がこれから考えていかなきゃならないのは」
――真面目だよね。
「でも無理はしないよ。できる範囲で、できることだけやる。俺はただの凡人だし。でも、ただその場にいただけの、ただの人間にしかできないことがある。どんな大根役者だって、舞台に上がっちゃったら代わりなんていないんだから。無理はしないけど、ベストは尽くさなきゃね」
――ふむふむ。ちょっと整理できました。ありがとう。
「thanks.今後もご贔屓に!」