「アーニティ。私の魔法力が切れるまでスパークを受け続けるのと、インテンス・コントロールで強化したローム君と殴り合うのと、どちらがいいかしら?」
「…………あの、いきなり何ですか」
「余計なことは言うなと散々言ったでしょう!」
「な、何か言いましたっけ?」
「あのイレーネとかいうナイトメアの子と、どういう話をしたの!?」
「どういうって……夜食をご馳走になって、お酒をご馳走になって、まあ……少し愚痴ってしまっただけですが」
「あなたが人生において愚痴を撒き散らさずに生きていけないのはあなたの責任でしょう。私と……リヴァの事は、口が裂けても言うなと言ったはずよ!」
「い、言ってませんよ!? ……そりゃ、ちょっと姉上のことについても愚痴ったような憶えはありますが、リヴァや義兄上がどうとかとは……」
「だったら、どうして『お嬢様』なんて……」
「…………あ。あー、それ、ちょっと誤解してませんか?」
「え?」


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「……まぁ、それはわかったわ」
「わかったなら、その魔法の粘土、片付けてもらえませんか……」
「もう一つ。……リヴァに誕生日カードを贈ったと言ったわね?」
「……あぁ。義兄上、柘榴石亭の冒険者の方と、会う機会があったらしいですね。あの人も、まぁ、お変わりないようで」
「カードに、何を書いたの?」
「何って……いたって普通にお祝いですよ?『誕生日に祝福を。貴方の誕生に感謝を。貴方の健やかな成長に祈りを。貴方の道に幸多からんことを。……ファーレンディア・ルールシェンク・シルフェル&アーニティ・ルールシェンク』」
「……"マナよ、雷となり……"」
「暴力に訴えるのはやめてください。……姉上がお怒りなのは、僕よりむしろ義兄上のことでしょう?」
「…………」
「前々から言ってますよね。僕は個人的に義兄上のことは心の底から大嫌いですが、ああなった以上、お二人のご関係については、弟としては認めますよ。でも、それならせめて、リヴァのためにも、まともに家庭作ってください、って。……お二人にそれができないのも知ってますけどね。でも、僕は、リヴァのことを一番に考えたいんですよ。……まぁ、お二人の『愛の結晶』ですから? 僕が口出しできる話でもないですが、叔父として出来る限りの事は、したいんですよ」
「……大きなお世話もいいところだわ」
「いらぬ苦労を背負いこむのが僕の生き方ですから。姉上とは逆にね」
「……まぁ、いいでしょう。今回はスパーク一回で」
「撃たない選択肢はないんですか……。あ、着替えてきます。この服セールで買ったやつじゃないので」