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リヴァはすやすやと寝入っている。朝までぐっすり寝てくれるようになってきたから、楽になった。流石に一人にはできないので、ベッドの傍らで本を読んでいる。
変わった事もないまま、今日も一日は過ぎていく。
……あぁ、期待していたんだろうか。
落胆している自分が面白い。いや、落胆とは違うかな。ただ単に、会いたいだけだ。
僕がそう思っているという事は、彼女もそう思っているのだろう。それだけで充分だと、常々は思っているのだけれど。
「……会いたい」
口に出して言ってみる。まるで恋に悩む少年のようだ。20歳にもなって。
声を殺して笑っていたら、リヴァが煩がるような声を上げた。
そのまま小さく寝返りを打つ。単なる寝言だったのだろう。
穏やかで幸せそうな寝顔。彼女によく似ている。
今ごろ、彼女も、こんな顔で眠っている? それとも、僕と同じ思いに駆られて懊悩している? 確信を持って言うが、後者だろう。
――やぁ、ファーレンディア。僕の事を考えてくれてる?
――馬鹿馬鹿しい。貴方の誕生日なんて憶えてもいないわ。
――また、君に追いついたよ。
――貴方と私では、過ごしてきた時間の意味が違うわ。
――まぁね。でも、僕なりに色々あったよ、この一年も。
――私の知った事ではないわ。
――プレゼントくらい、くれたっていいと思うな。
――贈り物なら、もう、あげたでしょう? 一生分。
――それ以上のものを貰ったよ。でも。
僕は、強欲なんだ。君と同じ位にね。
イメージの中で、彼女は、憮然とした顔をして……
それは、直ぐに微笑みに変わった。
僕たちは笑い合う。鏡のように、そっくりな仕草で。